ゼロコロナ政策解禁、急拡大する中国新型コロナ

中国で新型コロナウイルス感染が再拡大し、6月末にピークを迎え週に約6500万人が感染するとの試算が示された。オミクロン株から派生した「XBB」系統がコロナ感染拡大に拍車をかけている。中国当局はコロナの感染者数を公表しておらず、実態は不明だが、北京市ではコロナを含む感染症患者が5月15〜21日は2万5544人となり、4月17〜23日に比べて約4倍に増えた。

 中国政府が昨年11月に新型コロナウイルス感染症に関する規制を緩和し、12月にはコロナを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を突然解除した後、感染拡大ペースが加速した。当局がコロナ感染状況の日次データの公表を中止したり、感染による死亡の定義を狭めたりしたことで、同国でのコロナ感染の影響を測ることは一段と難しくなった。今回の試算は、中国の呼吸器疾患の専門家によるものを地元メディアが報じた形であるが、新たな感染拡大がどのように波及していくのか注意を要する状況だ。

 

 中国は、昨年12月8日から今年1月12日までに本土の医療機関で5万9938人がコロナ関連で死亡したと発表した。この時点で、北京大学の研究によれば、国内の人口の64%が新型コロナウイルスに感染したと報告されていた。さらに、今年2月7日時点では人口の82%、11億人以上が感染したと推測されている。中国当局が「ゼロコロナ」を突如撤廃して感染が猛威を振るってから半年近くが経過しており、ウイルス感染回復者やワクチン接種者の免疫(抗体の効果)が低下する中で、オミクロン株から派生した感染力の強い「XBB」系統が蔓延し感染拡大を引き起こしたものと考えられる。

 当局によるワクチン接種の強化が報じられているが、使用されているワクチンは中国産のワクチンであり、最も拡散しているオミクロン「XBB」系統に対する有効性については疑問が残る。欧米のmRNAワクチンを併用することで効果が期待できるとされているが、中国は使用を拒否しており、今回のような感染爆発を今後も繰り返すことになるかもしれない。

我が国では、9月以降に実施される新型コロナウイルスワクチン接種で、世界で主流となっているオミクロン型の派生型「XBB」系統に対応したワクチンが導入される。中国・武漢で当初拡大した従来型が再び流行する可能性は低いとして、「XBB」系統に対応する成分のワクチンに切り替えることとなった。コロナ禍から3年経ち、感染やワクチン接種によって免疫のある人が増加し対処法も確立した。しかし、ウイルス感染の流行は繰り返すものであることは忘れないでおきたい。

橋爪良信(理化学研究所マネージャー)

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