シリーズ 客船で世界を旅してみた~その15~

 今回の船旅でピースボートに乗船した仲間たちで集まると、決まって話題になるのがピースボートの新造船「エコシップ」(写真=ピースボートのパンフレットより)です。「エコシップ」は、総トン数6万5千トン、全長261.9m、乗客定員1800人の地球環境にやさしい最新鋭のクルーズ船です。新幹線型の独特な船首と10本のソーラーパネルを装着した折りたたみ式マストが大きな特徴です。フィンランドの造船所で建造され2020年4月に就航予定ですが、まだ設計段階ということで、乗船予約した人たちの間から本当に初航海に間に合うのか心配する声が出ています。
 エコシップのプロジェクトリーダーを務めるアンドレス・モリーナ氏によると、エコシップは、マストの両側面に装着されたソーラーパネルよる太陽光発電によって自然エネルギー効率を最大限まで高めています。自然エネルギーを船の推進力に利用する技術は、小型フェリーや貨物船では既に一部で実用化されていますが、今回のような大きさの客船では初めての試みです。エコシップでは、波の抵抗を減らす革新的船首デザインを取り入れ、最新鋭のソーラーマストによる風力と合わせ、2000年前後に建造された大型クルーズ船に比べて40%以上のCO2を削減できるとしています。船内には5階吹き抜け構造の洋上植物園もあり、世界各地の珍しい植物を楽しむことはもちろん、森林浴や野菜の水耕栽培も可能で、まさに世界一エコロジーな未来型客船ということで、私も乗船したいと思っています。それだけにエコシップの動向が気になります。それでは本来の船の旅に戻ります。

~世界遺産の街 グアテマラ・アンティグア~
 2017年7月1日早朝、グアテマラのプエルトケツャルに入港しました。ここへの入港は、当初の予定にはありませんでした。この3日前、ニカラグアのコリントへの入港が遅れ、約4時間しか滞在できませんでした。その埋め合わせに急遽寄港地に加えたのです。前日飛行機で行ってきたばかりの国に、今度は船で入ることになりました。港からバスで約2時間かけて古都アンティグアに着きました。
 アンティグアは3つの火山に囲まれた標高1500m の盆地に静かに佇む人口35000人ほどの小さな町です。かつては中米で最も華やかな都市として知られ首都でもありました。度重なる地震の被害が大きく、18世紀の大地震で壊れたままの教会や、スペイン植民地時代のコロニアルな街並みが残る歴史地区は世界遺産に登録されています。今回はガイドなしの自由行動でした。碁盤の目のよう仕切られた街の石畳の道を敷石の凹凸を気にしながら3時間かけて歩いて回りました。次はハワイに寄って日本に帰るだけなので、中米の土産を買う最後のチャンスでした。土産物屋と売り子で溢れた中心街で、ハンドメイドの色鮮やかなスカーフやショルダーバッグ、ブックカバーなどをどっさり買い込みました。物価が安い国なので当然土産物の値段も極めて安いとあって。ピースボートの仲間たちは皆、中国人観光客顔負けの爆買いをしていました。

~船内で県人会~
 ところで、船内ではたまに出身県別に食事会が開かれます。そんな機会に知り合った広島県出身者で時々集まっていました。6月には、バミューダ諸島のハミルトンから因島(現尾道市)出身の女優・東ちづるさんが乗船してきたので9階にある居酒屋に誘って県人会を開いたことがあります。東さんは、ピースボートの水先案内人の一人です。ピースボートでは各分野の専門家が、クルーズの様々な区間で乗船し、訪問する国々の文化や社会問題を語る講座を開いています。これらの人たちは、「先生」ではなく「同行者」として、船旅をより有意義なものに導くナビゲーター役を担っており、「水先案内人」と呼ばれています。東さんはプライベートでは、骨髄バンクや障害者アート等のボランティア活動を20年以上続けており、今回は、紛争や内戦で傷ついた子供達の治療とリハビリを行う「ドイツ国際平和村」の支援活動などを語る講座を担いました。その日、東さんは、ピースボートの紹介番組を取材中のカメラスタッフを従えて現れました。集まった20人余りで最初に広島カープの歌を合唱したのですが、我々の多くが手元の歌詞を頼りに歌うのを見て、「広島の人間なら歌詞くらい覚えてよ」と活を入れられました。東さんが居たのは30分ほどでしたが、気さくな人柄で話が弾みました。東さんは1週間ほど後、一足早く下船しました。次は、いよいよ最終寄港地のハワイです。
山形良樹(元NHK記者)

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