▼山あいに現れた異世界
5月中旬、神戸で親戚の1周忌法要があったので、その足で、前から気になっていた姫路の太陽公園を訪れることにしました。太陽公園は、姫路駅から少し離れた山あいにあるちょっと不思議なテーマパークです。一言でいえば「世界旅行を疑似体験できる場所」です。
16日午前、西宮に住む長男の車に乗せてもらい、私たち夫婦と長男夫婦の4人で、太陽公園に向かいました。中国自動車道から山陽自動車道へ、姫路西インターが近づいた頃、右前方の山の斜面に、突然、ヨーロッパの古城のような建物が姿を現しました。「あれが太陽公園か!」思わず声が出ます。
「姫路にあるもうひとつのお城」がキャッチフレーズだそうで、到着前から期待に胸が膨らみました。
出発から約1時間半で公園に到着。入場料は大人1500円ですが、後期高齢者の私は700円、実に半額以下、後期高齢者にずいぶん優しい公園です。
この太陽公園は、「身体に障害があり海外旅行が難しい人にも世界を体験して欲しい」という理念のもとに作られた施設だそうです。現在は、地元の社会福祉法人のグループが整備・運営しています。広さは、東京ドーム3個分。園内は、世界の有名建造物や石像が並ぶ「石のエリア」と、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城を模した「白鳥城」を中心とする「城のエリア」に分かれています。

私たちは、まず、1992年にオープンした「石のエリア」から見学することにしました。入口を入って間もなく現れたのがフランスのエトワール凱旋門です。ナポレオンの戦勝記念で建てられた世界的な観光名所で、私も4月の海外旅行で訪れたばかり。本物は、高さ約50mですが、こちらは約20mと本物の2.5分の1のサイズ。それでも細かな彫刻までかなり忠実に再現されていて、思わず見入ってしまいました。ただ、周囲の木々が少し視界を遮り、凱旋門全体をきれいに写真に収められなかったのはちょっと残念でした。
▼モアイ像に目があった!
凱旋門のすぐ近くに、イースター島のモアイ像が並んで立っていました。

よく見ると、何となく違和感があります。近づいてみて、その理由が分かりました。モアイ像に「目」が入っていたのです。まるでこちらをじっと見つめているようでした。太陽公園のモアイ像は、本物の3分の1から2分の1ほどの大きさですが、それでも間近で見ると十分な迫力があります。私はイースター島に行ったことがなく、もちろん本物のモアイ像も見たことがありません。モアイ像といえば、目のない無表情な石の顔というイメージでした。ところが調べてみると、もともとのモアイ像には目があったそうです。白い珊瑚と黒曜石で作った瞳がはめ込まれ、目を入れることで特別な力が宿ると考えられていました。モアイ像は、村や人々を守る存在だったのです。しかし、その後の部族同士の争いや信仰の変化によって、多くのモアイ像の目は壊されてしまいました。目を失ったモアイ像は、守る力を失った「眠る神」のような存在になったとも言われています。
つまり、私たちが普段写真などで見ている「目のないモアイ像」は、本来の姿ではなかったのです。太陽公園では、その“本来のモアイ像”に出会うことができました。
▼兵馬俑坑(へいばようこう)は出色の出来

「石のエリア」で、とくに見応えがあったのは、兵馬俑坑、兵馬俑の発掘現場でした。兵馬俑は、中国の秦の始皇帝の墓を守るように並べられた兵士や馬の像で、素焼きの粘土でできています。昔の中国では、支配者が亡くなると臣下を一緒に埋葬する「殉死」という習慣がありましたが、その代わりとして作られたとも言われています。兵士たちは等身大で、平均身長は約180センチもあります。顔つきや服装も一体ずつ違っていて、当時は色鮮やかに彩色されていたそうです。
太陽公園 では、中国で制作された兵馬俑のレプリカが約1000体展示されていて、発掘当時の様子を再現した場所もあります。

実は私は、2016年7月に中国を旅行した際、本場の兵馬俑を見たことがあります。広大な発掘現場いっぱいに兵士たちが並ぶ光景は圧巻で、そのスケールの大きさに驚かされました。もちろん太陽公園の兵馬俑は本場より規模は小さいのですが、再現度はかなり高く、中国で初めて兵馬俑を見た時の感動がよみがえってきました。
▼白鳥城で味わった絶品ジェラート
午後は「城のエリア」に移動し、モノレールに乗って小高い山の上にある「白鳥城」へ向かいました。白鳥城は、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城 を模した建物で2009年に完成しました。本物の城は、ディズニーランドの「眠れる森の美女」の城のモデルになったとも言われており、2025年には世界遺産に登録されました。私は2019年4月の欧州旅行で訪れたことがあります。
白鳥城は、本物のおよそ3分の2の大きさで再現されていて、とても存在感があります。その美しい外観から、テレビCMや映画、ドラマのロケ地としても人気があるそうです。7階建ての城の中には、トリックアートの部屋がいくつもありました。専用アプリを使うと絵が動いて見える仕掛けもあり、童心に返ったような気分で楽しめました。歩き回って疲れた後に、最上階の大広間で食べたジェラートは格別でした。その美味しさは、今でも忘れられません。

▼太陽公園のもうひとつの顔
ところで、太陽公園の中を歩いていると、高齢者や障害のある人たちが暮らす建物や支援施設があちこちにあることに気づきました。園内の清掃や施設管理、売店などの一部の仕事に、障害のある人たちが関わっているそうです。太陽公園は、写真映えするユニークな観光地というだけではなく、障害のある人たちが地域の中で働き、社会とかかわる場にもなっていました。私にとって太陽公園は、これまで訪れた海外の名所を懐かしく思い出しながら、もう一度世界旅行を楽しめる、不思議で心に残る場所でした。
山形良樹(元NHK記者)