<シネマ・エッセー> はじめての おもてなし

 2017年9月に行われたドイツの総選挙で、アンゲラ・メルケル首相の率いるキリスト教民主・社会同盟が第1党になったものの、得票率33%というこれまでの最悪の結果となりました。そして、反移民、反難民を掲げる「ドイツのための選択肢」が第3党になりました。
 次期政権発足に向けた連立協議も未だに難航しているそうですが、その背景にメルケル首相が2015年にシリアやアフガニスタンからの難民100万人を受け入れると発表したことがキッカケで起きた難民問題をめぐる国内世論の対立があるようです。
 この映画の原名は Welcome To Germany(ドイツへ ようこそ)。家族を亡くし、ナイジェリアからやって来て亡命申請中の青年、ディアロを受け入れたミュンヘンの医師・ハートマン一家で起きる笑いと涙の物語です。
映画の発端は一家の主婦で元教師のアンゲリカがミュンヘンの難民支援施設を訪れ、ディアロ青年を迎えることに始まります。
 青年がドイツ語を教わったり、庭仕事の手伝いをしながら日増しに一家に溶け込もうとしている矢先に、一家が催してくれた歓迎パーティが、アンゲリカの友達のせいで大騒ぎとなり、警察沙汰になることがきっかけで、のちに近所の人達や反移民の右翼団体との間にさまざまなトラブルが続発することになります。
 一家の娘、ソフィは心理学を専攻する学生ですが、ストーカーにしつこく追われ、これを見かねて撃退しようとしたディアロ青年との間に乱闘事件が起き、ディアロが警察に逮捕されるという事件まで発生してしまいます。
トラブルの連続に、夫婦仲は悪化し、夫のハートマンは家を出てしまうのですが、こうした事態を招いたのも自分のせいだと心を痛めるディアロを追い詰めるように、亡命申請が却下され、異議申し立ての審査が裁判所で行われることになります。
 結末はめでたくディアロの亡命が認められ、悪化した夫婦仲も家庭内騒動も丸くおさまるのですが、この映画のねらいは、難民問題そのものを描くというのではなく、それによって引き起こされる家庭内のトラブルをコミカルに描くことで、「現代ドイツの迷える一面」を浮き彫りにすることにあったのではないでしょうか。
 特に面白かったのは、外科医のハートマンが老いへの恐怖から、知り合いの美容整形医からプチ手術を受けたり、ヒアルロン酸注射を受けてまでして「引退」を拒否しているところや、息子の弁護士がワーカーホリック(仕事中毒)で妻と離婚し、息子を実家のハートマン家に預けて、仕事先の上海との間を往復しているうちにトラブルに巻き込まれるシーンなどは、笑えないというか、身につまされる一面がありました。
 この映画はドイツ・アカデミー賞観客賞を受賞し、400万人の観客を集めたそうで、監督はサイモン・バーホーベン。1月13日から公開されます。
磯貝 喜兵衛(元毎日映画社社長)

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