TVへの繰り言 ~NHK放送文化研究所の調査から~

テレビ視聴の「短時間化」が進んでいることが、NHK放送文化研究所の調査で分かった。インターネットの普及などメディア環境の変化によるようだが、テレビ側にも要因の一端はあるのではないか。まじめな視聴者ではない、老年の繰り言かも知れないが、気になることがあまりに多過ぎる。
放送文研が7月にまとめた「日本人とテレビ」調査結果によると、1日に「短時間」(30分~2時間)」見る人が38%で、5年前に比べて3ポイント増えた。「ほとんど、まったく見ない」人の割合も6%で2ポイント増えた。「短時間化」したのは1985年の調査開始以来初めてという。
テレビを見ていて気になる一つは、各局アナウンサーのニュース読みの劣化だ。ニュースを最初から最後まで、とちらずにきちんと読めるアナは意外と少ない。かまず(業界用語らしい)にスムーズに読んでも内容がしっかり伝わるわけでもないが、まずは正確に読むことはプロの第1の仕事だろう。NHKの森田美由紀アナに、定時ニュースに戻ってほしい。言い間違いも目立つ。「落石が落ちました」(NHK)、「択捉島に訪問しました」(TBS)。創業家を「そうぎょうか」、米国の上下両院「じょうげりょういん」、他人事を「たにんごと」と読むのも耳にした。大地震を「だいじしん」と読むアナもいる。大震災(だいしんさい)、大地震(おおじしん)が放送の決めごとだろう。
言葉が時代によって変化するのは止められない。しかし、せめて放送ではちゃんとしたに国語を使ってほしい。
「やばい」「まじ」「めっちゃ」「超××」――は耳障りだ。NHKeテレの語学番組でこの、例題に「お名前をいただけませんか」とテロップで流れたのにはびっくりした。「あなたに差し上げる名前は持ち合わせません」。
また、民放のニュース番組のワイドショー化が進んでいることも大いに気になる。特に朝の情報番組。ニュースの時間が短く、その分、芸能やグルメなどの話題が増えている気がする。行儀の悪いコメンテーターも見苦しい。司会が話し終える前に余計な口をはさんだり、専門外のピントはずれのことを長々と解説したり。「択捉、国後、色丹、歯舞」を読めない若いタレントを、他の出演者たちが大笑いする場面を見たが、私には笑えなかった。朝っぱらから、サイコロを振ったりして出演者たちが踊るパフォーマンスにどんな意味があるのだろうか。この動作が始まったら、私はチャンネルを代える。
NHKも民放と同じようなバラエティー番組を放送するようになった。元アナウンサーの山川静夫さんは「どの放送局でも見られるようなタレントが司会をしていて、アナウンサーはアシスタント役としてわきにまわされている。あれならNHKでなくてもいいわけだ」と述べているが(6月22日付朝日新聞夕刊)、同感だ。
最近、NHKの「ニュースウオッチ9」にチャンネルを合わすことがなくなった。発生ニュースを知るだけなら、7時の定時ニュースで十分だ。
止 七尾隆太(元朝日新聞記者)

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