就活イベント「春の夕」の開催報告

 メディア・コミュニケーション研究所(略称・メディアコム)で学ぶ現役生の就職活動を支援する「春の夕」が5月24日、慶応大学三田キャンパスで開かれた。このイベントは、OB・OGで作る綱町三田会とメディアコムゼミナール委員会との共催で2010年ごろから「秋の夕べ」としてスタートしたが、就職戦線の前倒しに伴って、就活を控えた3年生を対象に「春の夕」に衣替えしている。メディア業界に多くの人材を輩出しているメディアコムの層の厚さと結束力を物語るイベントとなっている。
 第1部はOB・OGやメディアコムの講師経験者が2人一組で面接官となり、学生と対面でやりとりする模擬面接。新聞、テレビ、広告、出版などメディア業界に加え、商社・金融を目指す学生向けに7つのブースが設定された。非公開での面接を希望する学生用の時間帯も設定され、夏のインターンシップを前にした3年生24人が果敢にチャレンジした。面接官は学生が事前に提出したエントリーシートを手に質問しながら、その場で受け答えのポイントをフィードバックし、「失敗を恐れず」「コツは習うより慣れろ」などとアドバイスしていた。経験豊かなOB・OGによる本番さながらのやり取りもあり、参加した学生は「準備の大切さを実感した」と振り返っていた。
 また、アナウンサー志望の学生からの要望を受けて、初めてアナウンサー向けの就職相談会と模擬面接を実施した。テレビ朝日の田原浩史さん(88年卒)と元秋田放送の佐藤征潤さん(15年卒)の二人のアナウンサー経験者が講師役となり、メディアコム4年生の内定者も加わり、4人の学生に実践的な面接を行った。田原さんによると、4人とも意欲的で、アナウンサーとしての素養は十分だったが、提出したエントリーシートは学生時代の活動報告が中心で、自分の魅力や人物像を十分に表現しきれていないものもあったという。田原さんは「自己分析に加えて企業理解を深めて戦略を立てることが重要」とアドバイスしている。
 第2部は烏谷昌幸所長のあいさつに続いて、大教室で若手OB・OGによるパネルディスカッションが開かれた。博報堂の木島翔子さん(20年卒)をモデレーターに、新聞、放送、広告、出版の第一線で活躍中の同期4人が登壇し、会社を選んだ動機や心に残った仕事、業界の未来などをテーマに本音トークを繰り広げた。パネラーと現役生は世代の近さもあって身近に感じられたようで、会場から「広告業界でAI(人工知能)の活用事例は」「結婚や子育てとメディアの仕事は両立できるか」など質問が相次いだ。
 終了後は西校舎の生協食堂に会場を移し、メディアコムの2年生も参加して懇談会が開かれた。綱町三田会の瀬下英雄代表幹事(66年卒)の乾杯の音頭で幕を開け、現役生とOB・OG約40人が交流を深めた。最後は中村達興さん(83年卒)のエールで参加者全員が「若き血」を熱唱した。
 日本新聞協会によると、新聞・通信社の採用試験は春の定期採用に加えて3年夏のインターンシップ活用が地方紙にも拡大しているという。一方で、採用の早期化に伴って複数社から内定をもらった学生の辞退が相次いでいることから、26年卒の採用では、同業他社との競合を避けるため、試験の開始時期を遅らせ、5月の連休明けに面接を開始した社もあるなど、採用活動は今後も多様化しそうだ。
文責・尾崎 敦(毎日新聞)

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