「春の夕」報告 模擬面接に参加して

 5月23日、メディア・コミュニケーション研究所による「春の夕」が開催された。私は研究所OBとして、以前から断続的に参加の機会をいただいており、今回は数年ぶりに模擬面接の面接官を担うこととなった。新聞記者志望が少ないことには驚かなくなって久しいが、広告と出版に興味のある参加者が多かったのは印象に残った。ひと頃と比べ、また流れが変わってきたということだろうか。
 私は出版編集者志望と、新聞記者志望の研究生に対して面接を行った。事前に配布されたエントリーシート(ES)は、各設問に関してほぼ字数を過不足なく埋めており、破綻のない文章で丁寧に作られていた。またそれを基にした現場での受け答えも、やや緊張はあっただろうが誠実に言葉をつなぐことができており、概して好印象だった。他業種志望の研究生については目配りできていないが、その印象から大きく外れはしない、というところではなかろうか。そのため、基本的な力については何ら心配する必要もないだろう。
 もっとも、今回こうした機会を与えられた以上、研究生たちの就活に少しでも多く役立ちたいものである。そのため、この度の模擬面接に参加して感じたことや、これまでの同種の経験も踏まえつつ、もう一歩先に進むためにはどうすれば良いか、管見ながら述べたいと思う。まずは面接について、そしてその大本となるESについて、である。なお本稿の記載内容は、あくまで個人の所感であり、筆者の所属先のいかなる見解も表すものではないことを、前提として付記する。

【面接について】
 ハキハキと明るく、といった外形部分は割愛したい。ここで意識を求めたいのは、いかに「自分が主導権をにぎる時間」を長くするかである。それは自分の話を長々と展開せよというのではない。面接官が終始、あなたのESに沿って質問してくるように心がけるべし、ということである。
 いうまでもなく、面接官は志望者のESを起点に面接を進めていく。そして、ほとんどの面接官は、あなたが予想しているよりもだいぶ緻密にそれを読み込んでいる。これから数十分話さなければならない相手との唯一の接点が、眼前のESだからである。せっかく書かれたことに水を向けても、実際の会話の中でそれ以上に中身がなかったり、抽象的な議論に終わったりすれば、面接官は「次に何をきけば……」となってしまう。結果として、ESの内容から離れた一般的な質問を重ねざるを得なくなり、その人の「個性」は後景に退いていく。
 だから、面接はそこにあるESを完成させる、パズルの最後のピースなのだと思ってほしい。ESに記載した内容についてたずねられれば、「実は、この背景には〓があって」などと、その奥に潜むさらなるストーリーをつなぐ。一般的な質問が来たとしても、抽象論で返さず、ESの内容に引きつけ自分の言葉で語る。頭の中に、少し空白を残したESを思い浮かべ、その空白を面接で埋めていく意識を持つと良いのではないか。

【ESについて】
 先述のように、面接とはESの最後のピースを埋める作業である。とすると、その前提となるESが最も重要であることはいうまでもない。ここでも外形面については割愛するとして、何より意識するべきなのは具体性、言い換えれば「固有の物語性」である。
 受ける業種によって、求められる「具体性」の中身は変わるだろう。ただ留意したいのは、「具体性」とは必ずしも「イベント参加者を前年から〓人増やした」といった数値のみを意味するのではないということである。それ以上に大事な具体性とは、「切れば血の出る言葉」「その人が五感でぶつかって得た言葉」であることだ。
記者目線で言えば、その設問に対する回答で「見出しに取れる」言葉があるか否か。「周囲を説得して課題解決につなげた」のであれば、どんな個性を持つ「周囲」に対し、自分はどのような言葉で「説得」し、それに対してはいかなる反応があって……。こうした場面を、脳内で再現しながら書くよう心がけたい。そして紙幅で書き切れない大事な部分を、面接で話すのだ。AIを壁打ちに使うことは、否定はしないが勧めはしない。あなたの物語を描くときに、あなた以上にそれに詳しい存在があるだろうか?
 もう一つ心に留めてほしいのが、「自分はこれを作りたいから、この会社に入る」を具体的にイメージしておくことである。「〓の部署で働きたい」よりも解像度を上げて、一生のうちに、その会社で何としても作り上げたいもの(出版社であれば一冊の本、新聞社であれば一つの記事 など)を固めておくとないとでは、説得力に大きな開きが生まれる。それはどんなタイトルで、どんな内容で、どんな外見で、どんな人の手に渡って……というところまで、綿密に練り上げるのが良い。

【おわりに】
 長広舌をぶったが、煎じ詰めていえばESや面接とは、あなたという人間・そこに息づく唯一の物語を伝える営みだと考えられる(むろん、独りよがりであってはいけない)。もっとも、それをいかに実践するかを理解するには、ある程度の練習や試行錯誤が必要であろう。筆者をはじめ、研究所のOBOGは、その点であなたたちに利用されるためにいる。ぜひ、利用できるものを利用し尽くし、就活を通じて充実した学びを得てくれることを願う。
山本悠理(朝日新聞記者)

(写真)当日の模擬面接のようす(研究所提供)

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