ベネルクス三国をゆく~海外旅行保険にも注意を~

 新型コロナウイルスの日本国内での感染が広がっています。集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号には去年の6月に乗ったことがあり他人事とは思えません。

 海外旅行中に病気やケガをした時に頼りになるのが海外旅行保険です。国内では外国人観光客が病院で治療を受け、その治療費を支払わないまま帰国してしまい治療費を踏み倒されるというケースが相次ぎ問題になっています。

 これは日本に限ったことではなく、諸外国でも起きており、ヨーロッパを中心に外国人観光客に対して海外旅行保険の加入義務化や加入勧奨、医療費の前払いなどの対策を行う国が出ています。

 今年初めての海外旅行は、1月27日から8日間、ベネルクス三国を旅しました。その旅先の一つオランダは、海外旅行保険の加入が入国の条件でした。入国審査時に保険契約書など保険加入の証明書の提示を求められるケースがあると聞きました。海外旅行をする場合、行先にもよりますが、私は通常クレジットカードに含まれる海外旅行保険を利用しています。

 今回はカード会社に連絡し、海外旅行保険に入っていることを証明する英文の付保証明書を発行してもらうことにしました。出発までに10日ほどしかなく証明書が間に合うかやきもきしましたが、何とか間に合いました。オランダは、海外旅行保険の保険金額には規定はありませんでしたが、欧州では一般的に治療・救難費用・死亡時の各項目でそれぞれ3万ユーロ以上が推奨されています。クレジットカードの付帯保険の補償額は死亡の場合を除いて合算できます。そこで私は3つのクレジットカード会社にそれぞれ付保証明書を発行してもらい3万ユーロ以上の条件をクリアしました。

~ベルギーの古都ブルージュ~

古都ブルージェの鐘楼

 今回の旅で一番印象に残ったのはベルギーの古都ブルージュです。街の縦横に運河が流れ、50以上の橋が架かる水の都で、「北のベネチア」とも呼ばれています。世界遺産の旧市街地の真ん中に高くそびえる巨大な建造物・鐘楼のてっぺんから街を眺めました。366段のらせん階段を息を切らせながら上ると、小運河や教会の塔などテーマパークのような絵画的な街並みが眼前に広がりました。

 ブルージュは、9世紀に毛織物業で栄え、13世紀にはハンザ同盟の貿易拠点として欧州一の繁栄を極めましたが、その後衰勢に向かい「忘れられた町」「見捨てられた町」とも言われました。その衰退の歴史があったからこそ中世の姿を留めることができたのです。

 今ではほのかに愁いを帯びた美しい古都を一目見ようと、年間800万人を超える観光客が訪れるようになりました。私は心の中で、古くから海運による物流の集散地として繁栄し今では観光地としてにぎわう故郷尾道とブルージュを重ねあわせていました。

ブルージェ旧市街地

~ブリュッセルの小便小僧~

 ベルギーの首都・ブリュッセルは中世の面影が色濃く残る街です。文豪ヴィクトル・ユーゴーが「世界で最も美しい広場」と形容した、様々な建築様式が調和して建ち並ぶ石畳の広場・グランプラス。ブリュッセル名物の小便小僧の像は、そこから歩いて2~3分の人通りの多い路地沿いにこじんまりと立っていました。ブロンズ製の像は高さ約56センチしかありません。おまけに台座の上の高いところにあるので、小さな像をバックに人物を入れた写真を撮るのに苦労しました。現在の像は複製で、小便小僧はこれまで2回盗難に遭っているそうです。

小便小僧(Manneken Pis)

~オランダで名画鑑賞~

レンブラントの「夜警」

 オランダでは名画の数々を楽しみました。アムステルダム国立美術館では世界三大絵画とも称されるレンブラントの集団肖像画「夜警」を鑑賞しました。縦3メートル63センチ、横4メートル63センチとレンブラントの現存作品の中で最大のもので門外不出、ここでしか見ることができません。現在修復作業が行われていてガラスで囲まれていました。描かれた当初はもっと大きな作品でしたが、市役所に移された際2本の柱の間に絵が納まるように大胆にも上下左右を切り取ったそうで、同じ部屋の中に切り取られる前の模写が飾ってありました。現地ガイドは何事にも寛大なオランダ人の国民性の現れと話していました。ハーグのマウリッツハウス王立美術館ではフェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」に会えました。日本に来た時とは違ってゆっくり鑑賞でき写真も撮れました。

フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」

~オフシーズンの利点~

 「夜警」も「真珠の耳飾りの少女」も我々日本人ツアー一行が貸し切りに近い状態で観賞できたのはオフシーズンだったからです。そういえばいつも混むブルージュの鐘楼もアムステルダムの運河めぐりの船も待ち時間ゼロでした。ルクセンブルクも含めどこに行っても心の余裕を持って観光できました。今回の旅の添乗員は、「中国をはじめ豊かになる国が増えるにつれ海外旅行をする人が急速に増加している。その影響が世界各地で出てきており、スペインのサグラダ・ファミリア(教会)は収容人数を超える観光客が押し寄せ折角行っても中に入れない状態だ。有名観光地の中には外国人観光客を規制する動きも出てきており観光するには厳しい時代だ。」と話していました。国連世界観光機関(UNWTO)の発表によると、全世界の国際旅行者数は、2015年の11.8億人から2030年には 18 億人に達すると予測されています。

 世界は今、観光名所の陣取り合戦が年々激化してきています。海外旅行は1年でも早く行くか、あえてオフシーズンを狙うか、海外旅行をする身には大変な時代になりました。

山形良樹(元NHK記者)

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