シリーズ 客船で世界を旅してみた~その13~

 今回の船旅の間に船内で結成した広島県人会の集まりが、8月18日、JR広島駅前のホテルで開かれるというので参加することにしました。ちょうどお盆で尾道に帰省していて都合が良かったからです。本来は、広島まではJR山陽線の普通電車で行くところですが、先の西日本豪雨の影響で広島に向かう在来線は途中不通区間があり、電車で広島まで行こうとすると2駅先の三原で新幹線に乗り換える必要がありました。お盆休みの頃は、金券ショップの安いチケットは使えません。わざわざ高い料金を払って新幹線を使わなくてはいけないのです。

なんとかほかに方法はないものかと尾道の商店街を歩いていると金券ショップの自動販売機に目が留まりました。広島行の切符の発券ボタンの上に張り紙があり、広島までの日帰りにはレンタル式があり、利用方法を説明するとのこと。さっそく店の人に聴いたところ、青春18きっぷ(1枚で5回まで利用できる)をいったん1万5000円で購入し、1回分使ったあとで店に返すと1万2000円返却してくれる、つまり3000円で広島往復ができるとのこと。青春18きっぷでは、もともと新幹線は乗れませんが、豪雨で不通になる前の7月6日以前に発券された青春18きっぷに限り、不通区間の代替輸送として新幹線が使えるという特例に目を付けたのです。

これまで一度も青春18きっぷを使ったことがありませんでしたが、意外なことでこの切符の恩恵にあずかることになりました。レンタル式のおかげで、広島まで在来線とほぼ同じ料金で、速くて乗り心地の良い新幹線を利用できたうえ、広島駅の新幹線の改札口を出てすぐのところが県人会の会場という利点もありました。さて船旅に戻りましょう。

~パナマ運河通航~

2017年6月26日昼前、カリブ海(大西洋)からパナマ運河に入りました。パナマ運河はアメリカが海洋戦略に基づいて建設を進め1914年に開通、1999年にパナマに返還されました。全長約80㎞を8時間から10時間かけて通航します。大西洋と太平洋の水位は同じでも途中通るガツン湖は、海より26m高いところにあります。このため船を上げ下げする必要があります。そこで前後を水門で仕切られた空間に船を入れ、水面を上昇下降させて、出て行く側の水位と一致させて船を進めるのです。

我々の船は前方の水門が開くと同時に両サイドから電動の牽引車にワイヤーロープで引っ張られて中に入りました。すると後方の水門が閉じられ水位が徐々に上がってきました。客室の

窓から外を見ると、まるでエレベーターに乗っているかのように船が浮き上がって行くのが良くわかりました。一連の動作を3回繰り返しやっとガツン湖に入りました。

パナマ運河は丁度この1年前に大型の3本目の水路が開通し、これまで無理だった巨大な船も通行可能になりました。地元ガイドによると1日に55隻から70隻が通過することで、パナマには、1日3500万ドルが転がり込むといいます。まさにドル箱運河です。運河を通るには半年前に申請登録しなければいけません。ちなみに我々の船の通行料は約一千万円だったそうです。両洋を結ぶ運河については、ニカラグアで中国系企業が2014年に総工費500億ドルで新しい運河の建設に着手しています。アメリカも19世紀にニカラグアでの運河建設に関心を持っていましたが、活火山が5つもあることなどから断念した経緯があり、ニカラグア運河の完成には相当な難航が予想されます。

~ニカラグア~

6月28日午後3時前、中米ニカラグアの小さな港町コリントに到着しました。午前8時の到着予定が大幅に遅れました。元々パナマ運河に入るのが遅れたうえに、我々の船の前を航行していた大型タンカー2隻が運河の通過に手間取ったのが原因です。問題の大型タンカー2隻は、前の年に出来たばかりの第3水路を利用する予定でしたが、我々と同じ旧水路に回された挙句、通過するにはギリギリの大きさだったため時間が余計にかかったのです。おかげでこの日予定されていたニカラグアでのツアーは全て中止になりました。滞在時間が4時間程しかないので急いで町に繰り出しました。タクシー替わりの人力車に乗ってはみたものの観光に値するほどのものはなく、市場で買い物をして早々に引き上げました。人力車の利用料は、4人で乗ってさんざん走り回って1人2ドル余り、気のいい運転手の若者と記念撮影をしました。ニカラグアでは独裁政権を革命で倒したあと、内戦の時期を乗り超え新しい国づくりの真最中です。次はエルサルバドルのアカフトラに寄港します。

  山形良樹(元NHK記者)

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