シリーズ 客船で世界を旅してみた ~その9~

先月(4月)、3泊4日で中国の北京に行ってきました。往復JALで現地のホテルは5ツ星、全ての行程に食事がつきました。現地ガイドの案内で、万里の長城や故宮博物院など4つの世界遺産を周って旅行代金は4万円余りでした。出発前、羽田空港の免税店で、ずっと前から欲しかったイタリア高級ブランドの紳士ベルトを買ったのですが、その価格は旅行代金とほぼ同じでした。高級ブランド恐るべし。さて船の旅に戻りましょう。

~ストックホルム~
 2017年6月2日朝、スウェーデンの首都ストックホルムに着きました。これで4日連続、しかも日替わりで異なる国を訪問したことになります。どこの国でも凸凹した石畳の道を長時間歩き回ったのでいささか疲れました。スウェーデンでは「ノーベル賞」をたどるツアーに参加、ノーベル博物館では、時間が40分余りしかないのにその半分をお土産の購入時間に費やしてしまいました。
日本人観光客のお目当てはノーベル賞の金メダルをかたどったチョコレートです。ここでしか買えないので稀少価値があります。一缶10個入り2600円もしますが、皆まとめ買いするので、日本人だけで長い列ができてしまいます。私もつられて2個買ってしまいました。
旧市街のレストランで昼食後、ノーベル賞の晩餐会が開かれるストックホルム市庁舎を訪問する予定でした。食事を終えてさあ行こうとした矢先、今日の午後は中に入れないと連絡がありました。楽しみにしていた授賞祝賀晩餐会の会場やダンスパーティーが開かれる「黄金の間」の見学は叶いませんでした。市の行事が入ったので部外者は入れなくなったとの説明でした。皆納得できずツアー担当者に詰め寄りましたが、市が決めたことには逆らえないとの一点張りでした。一気に疲れが出ました。市内の自由散策もやめ、市庁舎の外観だけカメラに収めて帰船しました。

~フロム鉄道~
 6月5日午前、フィヨルド観光の拠点として多くの観光客が訪れる港町、ノルウェーのベルゲンに到着しました。どんより曇っていました。フィヨルドは、氷河が山の斜面を滑り落ちる途中で地表を削り、U字形の谷になったところへ海水が入ってできた入江です。港から2時間半かけてフィヨルドの入り込んだ奥深くにある町・フロムへ向かい、途中41箇所のトンネルを抜けました。トンネル内は岩肌がむき出しで粗粗しい感じでした。ノルウェーには全長24.5kmの道路トンネルとしては世界で一番長いトンネルがあります。本当にトンネルの多い国です。何しろ国土の4%しか農地がなく、ほとんどが急な斜面の山です。
フロムでは山岳鉄道に乗りました。標高差864mの山岳駅までの片道20キロを2時間かけて往復しました。ここでもトンネルが20箇所ありました。このうち18本が手掘りで、1m掘るのに1ヶ月掛かったといいます。列車の窓の向こうには、急勾配の斜面から吹き落ちる滝や山頂付近に雪の残る山々の野性的で息を呑むような光景が広がっていました。
ガイドの話では、人口わずか450人の町フロムは、大型客船が年間160隻も押し寄せるほどの観光地になりましたが、静かな生活が壊されると観光化に反対する住民もいます。観光客が家に勝手に入ってトイレを使うそうで、家に帰ったら自宅のトイレに観光客の長い列ができていたという笑えない話までありました。

~フィヨルド遊覧~
 6月6日、早朝から船の7階前方のデッキが開放されました。いよいよノルウェー国内最大のフィヨルド・ソグネフィヨルドの遊覧開始です。ソグネフィヨルドは、長さ203km、幅5km程で、最深部の深さは1,308mもあります。両岸には所々1,000m級の山のような崖がそびえ立っています。その中を船はゆっくりと進みました。
朝から雨が降っていました。ノルウェーは雨の日が多いそうで、1年のうち232日が雨の日で、残りの日も一日中晴れることは滅多にないとのこと。そんな晴れの日には、皆仕事を放り投げて日光浴をすると地元ガイドが言っていました。それにしてもノルウェーの物価に高さには驚きました。たとえばビール1杯が日本円換算で1000円です。酒税が80%ですからしかたがないのかもしれません。物価が高い分賃金も高いので隣のスウェーデンから出稼ぎに来るそうです。
11時過ぎ、ソグネフィヨルドの支流にあたるネーロイフィヨルドに入りました。ネーロイは、狭いという意味で、幅が約250mしかありません。独特の景観美を持つとして2005年に世界自然遺産に登録されました。霧で霞んでその素晴らしさがよく分からなかったのが残念でした。外海に向かう船の後方デッキからフィヨルドの切り立った尾根が幾重にも重なって見えました。一番奥には雪化粧をした山々、手前に濃い緑と赤茶けた岩肌の崖が続き、糸を引くように流れ落ちる滝がアクセントを付けています。SF映画に出てくる、はるかかなたの星のような光景をいつまでも眺めていました。次はアイスランドです。
山形良樹(元NHK記者)

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