シリーズ 客船で世界を旅してみた ~その7~

インフルエンザが各地で猛威をふるっています。91才の母が入居している広島県尾道市の老人ホームも集団感染しました。母も感染しましたが、幸い軽くて済みました。母は、1年ほど前まで私たち夫婦と同居していました。今回の船旅では、私たちのいない3ヶ月半の間、介護保険・要介護2の母の面倒を誰が見るのかが課題でした。マンションに一人残すことはできません。息子か妹のところに預かってもらうことも考えました。
結局、尾道の老人ホームの部屋が空いたので、入居してもらうことにしました。本格的に介護が必要になった時には、そうしようと決めていたので、それが早まったのです。今回の船旅でも、老親どころかペットの世話をするため夫婦のどちらかが日本に残り、ひとり参加という方が結構いました。さて船旅に話を戻します。

~フランス・ルーアン~
20180305d 2017年5月22日、船は、ル・アーブルからセーヌ川をゆっくりと上っていきました。両岸には、童話の世界のような街並みや放牧された牛たちがのどかに草を食む牧歌的な風景が広がっていました。6時間かけて古都ルーアンに着きました。救国の乙女ジャンヌ・ダルクが処刑された悲劇の街です。
ジャンヌ・ダルクは15世紀、英仏百年戦争の最中に突如現れ、敗色濃かったフランスを奇跡的な勝利に導きましたが、最後は魔女として断罪され火炙りになりました。処刑場となった旧市場広場には、彼女に捧げられた背の高い十字架とモダンな造りの教会が建てられていました。教会の屋根の形は火刑台の炎を連想させます。処刑された時彼女は19歳、毅然とした態度だったといいます。ジャンヌ・ダルクは、今ではフランスの愛国心のシンボルになっています。
20180305c ルーアン美術館では、印象派絵画の巨匠・モネの有名な連作である「大聖堂」などを鑑賞しました。この美術館は入場無料、しかも作品をカメラで撮り放題なのです。このあとモネが描いたノートルダム大聖堂を見学しました。そこで絵と同じ角度で写真を撮ってみました。木骨組みの家が並ぶ旧市街の石畳の道をゆっくりと歩くと、タバコの吸殻がいたるところに落ちていました。この街では歩きタバコはOKなのです。意外でした。

~デンマーク・コペンハーゲン~
5月26日、デンマークの首都コペンハーゲンに到着しました。デンマークは世界最高水準の社会保障制度を持ち、食料もエネルギーも自活しています。原子力発電所はなく、国内エネルギーの16%以上を自然エネルギーでまかなっています。港の沖には風力発電機が立ち並んでいました。
20180305a まずは、デンマークの代表的な童話作家・アンデルセンが書いた童話「人魚姫」をモチーフに作られた銅像を見に行きました。お目当ての銅像は、船着場から歩いて10分位の海辺にありました。生身の人間と同じ位の大きさです。銅像とは言え裸の女性を大勢で取り囲み、興奮気味にカメラに収める人々の姿は滑稽にも思えました。像のモデルは、製作者の妻で、俳優の岡田真澄・EHエリック兄弟の伯母にあたるそうです。意外と日本とのつながりがありました。
このあとデンマーク王室および政府の迎賓館として使われているクリスチャンスボー城のロイヤル・レセプション・ルームや、王室コレクションを擁するローゼンボー城、王室御用達の陶磁器を造り続ける「ロイヤル・コペンハーゲン」の本店など、王室にゆかりの場所を巡りました。今の女王はかなりのヘビースモーカーだそうです。「開かれた王室」というイメージを強く持ちました。高福祉ですがその分税金も高く、物価も高いというのがデンマークの印象でした。

~ラトビア・リガ~
5月28日、ラトビアのリガに到着しました。リガはラトビア共和国の首都、バルト三国最古の町で現在も最大の町として栄えています。中世の面影を残す旧市街地は、世界遺産に登録されており、その美しさは、「バルト海の真珠」「バルトのパリ」とも例えられるほどです。第二次世界大戦の空襲で破壊されたものの、1999年に再建され、見事にその美しさを取り戻したブラックヘッドの会館やバルト3国最古の建築物の一つであるリガ大聖堂などを見て回りました。
道すがら地元の女性ガイドから、他国の兵士との恋に落ち門限を破った女性が城壁に塗りこまれて亡くなったという言い伝えや、魔女狩りにあった女性たちが処刑され川に投げ込まれたという昔話を聞かされました。女性が塗りこまれた壁からは満月の夜「永遠にあなたを愛します」と女性のささやき声が聞こえて来るといいます。そんなことがあっても何の不思議ではない、そんな気がする町でした。次の寄港地はロシアのサンクトペテルブルグです。
山形良樹(元NHK記者)

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