インバウンドで甦る関西経済

 「大阪の景気はどうです?」と聞かれたら、ためらいなく「長いこと、低迷しています」と答えてきた。ところが、シンクタンク、アジア太平洋研究所(APIR、大阪市)が先月(12月)中旬開いた景気討論会に出て耳を疑った。パネリストの一人、角和夫・関西経済連合会副会長(阪急電鉄会長)が「いまほど明るい関西はない」と言い切ったのだから。あとで周辺に聞いてみたら、大方の経営者は大阪・関西の企業収益は上り調子と考えていることが分かった。電子部品など輸出・生産が増えていることなど好調を裏付ける経済指標には事欠かないが、何といってもインバウンド(訪日外国人)の増加が大きいようだ。
 大阪都心の心斎橋筋商店街を歩いてみると、聞こえてくる会話は中国語、韓国語などが多い。いくつか、統計データを見てみる。2016年の訪日外国人旅行者数は全国で2404万人。12年に比べて2・9倍に増えた。関西ではこの間、全国を大きく上回る3・8倍になった。大阪だけを見ると、インバウンド数は940万5千人と推計され、12年に比べて実に4・7倍になったのである(国土交通省近畿運輸局)。テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市)は、先月中旬、去年の外国人入場者数が2001年の開業以来、初めて200万人を超えた、と発表した。ハリー・ポッターなどのアトラクションが海外にも受けて、アジア各国からの入場者が増えているという。
 ホテルも大忙し。近畿運輸局の調べでは、関西の延べ宿泊者数は一昨年までの6年間にざっと4倍に増えた。大阪府内の一昨年の宿泊施設の稼働率は過去最高の84%強になった。大阪市内を中心に、ホテルの予約が取りにくい状況が今も続いており、御堂筋はじめホテル建設計画が相次いでいる。こうしたなか、星野リゾート(星野佳路代表)が、大阪市内の日雇い労働者の街「あいりん地区」近くにホテル「OMO」の進出を打ち出して話題になっている。
 外国人客が増えれば買い物客も増える。ひところの「爆買い」は一服状態だが、買い物意欲は相変わらずおう盛のようだ。日本銀行大阪支店の発表では、去年11月の関西の百貨店免税売上高は99億8900万円で前年同月に比べ約2・1倍。13か月連続で前年実績を上回った。
 日本百貨店協会のまとめでは去年11月の全国の百貨店売上高は前年同月比2・2%増で、2カ月ぶりに前年実績を上回った。地区別にみると、近畿(福井県を含む2府5県)は同5・2%増。8カ月連続の前年実績プラスだった。中でも大阪地区は11・6%増と、全国10都市の中でもダントツだった。商品別では、化粧品が61%も増えた。
 インバウンドが増加しているのは、国の観光戦略が奏功しているが、関西が際立つ背景には、角関経連副会長も指摘しているように、関西の空港が活性化してきたことが大きい。2016年4月に関西国際空港と大阪(伊丹)空港の運営権を関西エアポート(大阪府泉佐野市)が取得、格安航空会社(LCC)の路線網拡大、専用ターミナルの整備などを進めた結果、旅客数が大幅に伸びている。今年4月からは神戸空港も民営化し、3空港の一体運営が始まることになっている。
関西は2020年の訪日外国人をいまの倍の1800万人に増やすことを目指している。受け入れ態勢が追いつかないなどの課題を抱えながらも、しばらくはインバウンド景気が続くことになりそうだ。
七尾 隆太(元朝日新聞記者)

Authors

*

Top