大阪4大オーケストラの饗宴

 大阪府内を拠点に活動をしている四つのオーケストラが競演するコンサートが4月8日、大阪・中之島のフェスティバルホールで開かれた。名称は「大阪4大オーケストラの饗宴」。今年が3回目で、ファンの間では「4オケ」と呼ばれている。同じ日に、同じホールで四つものオケが演奏するなど東京は無論、他都市ではほとんど見られないという。2700席のホールは満杯。各楽団の演奏が終わるごとに、惜しみない拍手が響き渡った。大阪では10年ほど前、地元財界から「4オーケストラ統合論」が持ち上がって大騒ぎになった経緯もあるだけに、「4オケ」に対するファンの思い入れは強い。 
 出演したのは、日本センチュリー交響楽団(愛称・センチュリー)、大阪交響楽団(大響)、大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)、関西フィルハーモニー管弦楽団(関フィル)。プログラムをなぞると、センチュリーは、飯森範親指揮のハイドンの交響曲「太鼓連打」、大響は85歳の長老、外山雄三指揮、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」、大フィルは若手指揮者の角田鋼亮が振ったリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、関フィルはレスピーギの交響詩「ローマの松」。指揮者の藤岡幸夫は慶大文学部卒業後、英国王立ノーザン音楽大に学んだ異色の経歴持ち主。東京出身だが、00年に関フィルの正指揮者(現在は首席指揮者)になって関西在住17年目。いずれの演奏曲も20分前後の人気曲で親しみやすい。それぞれ、魅力を発揮し合った。
 公演開演30分前には、旧フェスティバルホール時代の「大阪国際フェスティバル」の開幕を告げたファンファーレ(團伊玖磨作曲)が鳴り響き、各楽団のホルン奏者がマーチを奏でた。指揮者4人がそろって、聴きどころなどを話すコーナーも受けた。

 「4オケ」は、「大阪国際フェスティバル」の目玉企画として15年4月に第1回が開かれた。同フェスティバルは、HPによると、1958年から朝日新聞文化財団の主催でフェスティバルホールを主会場に、毎年開かれてきたわが国の代表的な音楽祭の一つ。フェスティバルホールの建て替えで一時休止されたが13年春に再開、この春55回を迎えた。フェスティバルホールは、朝日新聞大阪本社などが入居する超高層ビル「中之島フェスティバルタワー」の2~7階を占める。旧ホール(1958~2008年)を建て替え、13年4月に新装オープンした。残響時間はクラシック仕様で2・2秒(空席時)。「『天井から音が降って来る』とたたえられた旧ホールの特性を受け継いだ」(12年11月7日付朝日)とされ、演奏家や視聴者の評価が高い。
 
 4オーケストラはそれぞれ生い立ち、特色が異なり、経営も順調だったわけではない。とりわけ、06年には、関西財界のトップが「4オケを一つに統合したらどうか」と提言、楽団員、関係者らから猛反発を買った。「分散している経済界、自治体の補助金を一つの楽団に集中させて世界に誇りうる楽団にしたら」との考えだったようだが、優秀な奏者を集めたからといって素晴らしいオケができるわけでないことは素人でもわかる。この話が立ち消えになったかと思ったら、08年には、橋下徹大阪府知事(当時)がオーケストラに対する補助金の大幅削減を表明した。中でももともと大阪府が設立したセンチュリーはもろに影響をかぶった。年間4億5千万円あった補助金は11年度からゼロに。以後、自立に向けた懸命な活動を続けている。
 「4オケ」を育て、各オケが競い合うことによって、大阪のクラシック音楽の魅力を一層高めてほしいと願う。
七尾 隆太(元朝日新聞編集委員)

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