「政界、一寸先は闇」とは田中角榮元首相の秘蔵っ子だった当時の大物政党政治家 故金丸信氏が初めて語ったとされる。そうした意味では今回のアベノミクス解散の結果がどうなるかは今の段階では闇の中と言うべきなのかもしれない。しかし、頭の体操ぐらいは許してもらえるだろう。
安倍首相は先月(11月)18日に衆議院を解散することを表明して「与党で過半数を取れなければ辞任する」と述べた。衆議院の定数は475議席である。過半数とは238議席を意味する。ここで先ず、頭の体操に前提をおいてみる。
第一に、与党 公明党の現有議席31は、その組織力から見て変化はないとする。自民党は公明党という下駄を履いて立っている。もう一つの前提として、自民党の一年生議員いわゆるアベチルドレンとされる120人からかなりの数の落選者が出るとする。小泉、小沢チルドレンも二回目の選挙でかなりが落選した。
さて、過半数238議席とは何を意味するか。自民党は今の議席295から88議席減らして208議席へと”転落”する。そして、頭の体操の一つとして自民党の88議席をそっくり民主党が取り戻したとすると民主党は143議席へと”大躍進”する。だが、ここで自民党は下駄を履いて現れ与党238議席の巨大な壁が依然として、野党の前に立ちはだかる。そこで、”奇跡”としてアベチルドレン120人全員が落選し、その受け皿に民主党がなったとする。なんと自民党と民主党 はいずれも175議席と対等に並ぶ。だが、全野党連合という”奇跡”でも起これば別だが、ここでも矢張り”下駄効果”が効いて自公政権は206議席と安泰である。
安倍首相の脳裏に”解散”という火が最初に灯ったのは今年の「4月-6月」のGDPデータが公表された8月13日だったかもしれない。4月の消費税率引き上げの影響は小さいというマスコミやエコノミストの予想が外れ想定外の大幅な落ち込みとなった。
この頃、安倍首相が「消費税率引き上げを二度も同じ政権で実行した例は無い」と側近に語ったという記事が読売新聞などに掲載された。そして、この後、安倍政権の先行きを危ぶむような出来事が続く。
まず、9月。内閣改造の目玉 5人の女性閣僚のうち2人までもがスキャンダルで辞任に追い込まれてしまう。10月に入ると福島知事選は野党の民主党が推す副知事に相乗りして急場をしのいだが、11月の沖縄知事選では自民党が推す現職が大敗する事態をむかえた。そして、消費税再値上げの根拠とするとしていた「7ー9」GDPのデータ公表の日が近づくにつれ生産・消費などの個別の事前公表数値は芳しくないものが並び始めた。安倍首相に良い結果は望めそうもない。
実は、安倍首相が消費税再値上げを先送りしようすれば、最大の障害が政府・与党に存在した。まず、麻生財務大臣、そして 谷垣現幹事長・元財務大臣更に消費税増税を谷垣氏と共に誓った公明党の山口那津男党首という3人であった。3人を説得しようとすると最悪の場合 政府・与党に亀裂が入り収拾が難しくなる事態が予想された。
安倍首相は、二期連続のマイナス成長となったGDP公表の翌日 、11月18日には衆議院の解散を表明した。「政府・与党内の対立を抑え込んだ見事な解散劇だった」と自民党のベテラン議員は舌を巻いた。
さて、アベノミクスのこれまでの二年については厳しい意見が多い。GDPの二期連続のマイナスはリセッション・不況を意味する。安倍首相は「アベノミクスは道半ば」と今やうまくいっていない事を認めている。今月14日に誕生する第三次安倍政権は何をしようとするのか?何が変わるのか?安倍首相が消費税増税10%を約束した2017年4月までに何が変わるのか?もし、アベノミクス第三の矢が成功しなければ、ほぼ2年後に又同じ事態をむかえるだろう。
陸井 叡(叡Office代表)