「AI革命という嵐の中をほとんど目隠しのまま突き進んでいる」(カナダ・トロント大学 クリスティーナ・マッケルへラン教授。ブルームバーグ通信による)
昨年(2025年)、世界の株式市場、特にニューヨーク市場では、代表的な株価指数「S&P500種株価指数」が3年連続で史上最高値を更新した。そして、経済専門通信社ブルームバーグ社が調査したところ、ウオールストリートの著名なアナリスト21人全員が今年(2026年)も株価は上昇を続け、リーマンショック以来では最長となる4年連続で最高値を更新すると予想した。伸び率も4年連続で20%を超えるという。
いったいなぜアメリカの株価はこんなに上昇が続くのか?答えは、去年(2025年)のアメリカの株価上昇分の45%は、グーグルなどのテック企業7社、いわゆるマグニフィセント7が占めているという証券会社の調査データにありそうだ。調査によれば、マグニフィセント7が株式市場で稼いだ株価時価総額はアメリカのGDPの1/2とほぼ同じだと言う。
マグニフィセント7はその膨大な資金を一体何に投資しようとしているのだろう。“AI革命という嵐の中”、彼らの重要な投資先の一つはAI開発に必須とされる「データセンター」の建設だ。データセンターとは、巨大なコンピューターセンター。といっても、これまでのものとは想像を超えて、東京ドームの数倍という敷地にコンピュータが収納される高層棟が並ぶという“異様”なものだ。
ここ数年で驚くべき発展を遂げたAI。いわゆる生成AIは、例えば検索機能が驚異的に発達し、難しい質問にも瞬時に回答する。“人間業”を嘲笑うかのように天文学的スピードで仕事・計算を済ませてしまう。だが、問題がある。生成AIの機能を支えるには膨大なエネルギー・電力が必要とされる事だ。計画段階ではあるがアメリカには退役した原子力潜水艦の原子炉を再稼働してエネルギー源にしようという動きもある。
アメリカの調査会社によるとマグニフィセント7によるデータセンター投資予定額は2025年だけでも3710億ドル、日本円で57兆6000億円。日本の2026年度当初予算122兆円余りのほぼ半分に当たる。
では、この資金の出し手は誰か?勿論、マグニフィセント7も出資者の一部だが、別に多くの投資家が存在する。カラクリがある。実は、データセンターの建設資金の主な出し手は、世界をまたに巨額のマネーを運用するファンドや大手の不動産デベロッパーらである。彼らが担保としているのはマグニフィセント7が株式市場に創り出した時価総額という“黄金”⁉である。データセンターが完成して稼働可能となり、しかもAI開発に必要となったら、マグニフィセント7は長期にわたってセンターを使うといういわば賃貸契約を結んでいる。まだ、多くのデータセンターが建設中、ないしは計画中であり、AI開発に向けた利用実績は殆どない
「AIが5年後どうなっているかなんてメタ(マグニフィセント7の1つ)だってわからない」と関係者は語る。果たせるかな、最近の中国からの報道によると、アメリカの最先端半導体企業NVIDIAで働いて帰国した中国人技術者が、電力使用がこれまでの半分で済む半導体を開発したという。また、日本では、電力を使用せず、光で半導体回路を作れる技術が開発されたという。電力はほとんどいらない。
マグニフィセント7は今、まさに“AI革命という嵐の中をほとんど目隠しのまま突き進んでいる“のかもしれない。ニューヨーク・ウォールストリートでは、今もバブルはまだ先という見方が大半。むしろ、これまであった警戒論が影を潜め強気一色だという。しかし、バブルの頂点は、市場の全員が同じ方向を向いた時だという事を考えるべき時かもしれない。
陸井叡(叡Office)