日本版「トランプワールド」の幕を開けた参院選 

「(アメリカから黒船艦隊がやってきた日本の)幕末に起きたような革命的な出来事が今(の日本に)起こりかけている。アメリカのトランプ大統領にどう対応して行くかで、日本は変わって行くかもしれない。」(2025年5月、御厨貴東大名誉教授の講演より)

 先月、2025年7月20日の日本、参議院議員選挙があり、即日開票された。結果は、実に、自由民主党(自民党)が1955年の結党から70年、はじめて衆参両院で過半数を失うという歴史的敗北だった。だが、石破茂首相は辞任を拒否、政局は一気に流動化しはじめた。

 頭の体操として今後の石破政権の行方について3通りシミュレーションをしてみた。①石破首相辞任のケース。②石破政権と野党が何らかの形で連携して行くケース。③何れかのタイミングで野党から不信任案が突きつけられ内閣総辞職、総選挙へというケースだ。
 先ずケース①自民党内で“石破おろし”の中核となっているのは旧安倍派、麻生派など。そもそも今回の惨敗の責任は石破氏というより、裏金問題etc.を長く引きずった彼らに遠因があるとする主張が実は、党内に根強くある。自民党内での“石破おろし”は決定打をかく。
 次に②について。衆参両院で過半数割れとなった自民党が先ず手をつけたのは、これまで石破首相が反対していた「ガソリン税の暫定税率撤廃」について賛意を表明する事だった。野党7党の提案に“乗る”という石破首相“豹変”だ。そして、まもなく来年度予算編成の時をむかえる。与野党最大のテーマは消費税の今後の扱いだろう。消費税を何らかの形で引き下げるという方向については、ほぼ全ての野党が合意している。財政規律を守るとして反対したのは石破首相のみだったが、ここでも石破氏は“豹変”するのか。”豹変“をくり返しつつ、石破首相は、自民党総裁としての任期がくる2027年秋まで政権を維持する事は理論上可能だ。
 さて、最後に③内閣不信任案のケース。これは、野党が“団結”できればいつでも石破政権を打倒できる。石破内閣総辞職、総選挙へという“サドンデス”のケース。だが、“野党団結”に疑問符がつく。石破政権から”連立“という甘い誘いに国民民主党や日本維新の会が“乗る”のではないかという見方が消えない。

 ところで、今回の参院選での驚天動地の結果は参政党の躍進だった。2022年の参院選で初めて国政に議席を獲得してから僅か3年。比例区での得票数は、自民党に次ぐ第2位。国民民主、立憲民主を抜いて比例区だけをみればまさに”野党第一党“に踊りでた。今回の参政党の躍進の“謎”を解く鍵の一つは前回を大きく上回った投票率57.91%とキーワード「日本人ファースト」にあるかもしれない。
 アメリカファーストをキーワードとするトランプ政権。勝利の鍵はこれまで選挙に期待していなかったいわゆるラストベルトの白人を投票所に行かせた事だった。トランプ氏はリアリティーショウさながら、言葉巧みに彼らの溜まりに溜まっていた不満に火をつけることに成功した。そのツールはSNSだった。
 日本での参政党の勝利。投票当日の出口調査などを含む多くの分析を見ると、支持層の中核は50才前後のいわゆる就職氷河期世代とみられ、メディアでのインタビューには今回はじめて投票したと話す例も多い。既存の権力構造(財務省、自民党、大企業、一流大学、大手メディアetc.)への不満を「日本人ファースト」というキーワードに集約、やはり、SNSによって掬いとったのが参政党。投票率の最近にない高さは彼らによってもたらされたという推定もあながち外れてはいまい。日本でも「トランプワールド」の幕が開いたのかもしれない。
 アメリカの白人層と移民を含む非白人層の対立のような鋭い人種対立はまだ日本では見られない。又、アメリカに見られるような絶望的な貧富の格差はまだ日本にはない。だが、参政党はその匂いを嗅ぎ取ったのかもしれない。それが「日本人ファースト」が受けた理由である可能性を見逃してはなるまい。

 石破政権の寿命はわからない。こうした中、世界はアメリカ・トランプ政権次第で“怖しい”事が起こる可能性を秘めている。トランプ関税はどうやらアメリカ経済を痛め、うっかりすると世界恐慌へという道筋もある。そしてトランプ政権の核に対する不用心さは意図せざる核戦争、世界の終わりさえ連想させる。日本政治の不安定などちっぽけな問題なのか?
陸井叡(叡Office)

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