エムポックス(サル痘)ワクチン支援、アフリカへの不公正な扱い是正を

 エムポックス(サル痘)は、1970年コンゴ民主共和国で最初の感染確認があったとされる。そして、2022年までにアフリカ中央部、西部などで感染がみられ、更にヨーロッパの一部地域でも拡大が確認された。エムポックス対応ワクチンはデンマークの製薬会社が提供しているが、量が少なくアフリカには充分行き渡っていないとされる。[編集者注]

 世界保健機関(WHO)は、今年(2024年)8月14日、アフリカの一部地域で感染の確認が相次ぐエムポックス(サル痘)について、「公衆衛生上の緊急事態」にあると宣言した。「緊急事態」は、2022年7月以来。

 WHOによると、ことしこれまでにコンゴ民主共和国(DRC)で報告されたエムポックスの感染例は15,600件とすでに昨年の合計を超え、死者は537人にのぼる。

 WHOのテドロス事務局長は、DRC東部で急速に感染が拡大しているほか、周辺の数か国からも感染が報告されていることに触れ、「感染拡大を食い止め、人命を救うためには協調した国際的な対応が必要」と述べた。

 この「緊急事態」宣言を受けて、南アフリカのラマポーザ大統領は、アフリカ連合(AU)におけるパンデミック予防・準備・対応(PPPR)を推進する立場から「AU内の複数の地域でエムポックスが急速に拡大し、症例数と死者数が大幅に増加していることを深く懸念している」と声明を出した。また、2022年の「緊急事態」においては、ワクチンや治療薬が主に西側諸国向けに開発・提供されたとして、「アフリカにほとんど支援が届かなかった不公平な扱いを是正しなければならない」と強調した。

 日本の厚生労働省によると、日本国内では2023年12月に初めてエムポックスに感染した患者の死亡が確認されている。死亡したのは埼玉県の30代の男性で、HIV=ヒト免疫不全ウイルス感染による免疫不全があった。

 国立感染症研究所によると、エムポックスは発熱や発疹などの症状が現れるウイルス性の感染症で、多くの場合は軽症で自然に回復するが、子どもや免疫不全の患者は重症化する場合がある。
神谷美紀(元東海テレビ記者)

<写真>南ア・ラマポーザ大統領 Open Goverment Licence

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