綱町三田会報告「秋の夕」

 慶應義塾大学のメディア・コミュニケーション研究所(略称メディアコム)の研究生の就活支援の活動として、メディアコムと前身・新聞研究所のOB・OGで作る綱町三田会が企画して開かれてきた「秋の夕べ」が、今年は9月30日午後、三田キャンパス南校舎の教室で行われた。
 第一部は「パネル・ディスカッション」。メディアコムを卒業して5-6年のOBGに集まってもらい、それぞれ進んで活躍している企業での仕事ぶりなどを語り合ってもらい、研究生からも質問を受ける。第二部では、これも新聞研究所を終了して30年ほどのOBGが面接官となって、希望者が体験をする模擬面接。そして第三部、全体のまとめとしての「模擬面接講評」という仕立て。この方式になって、すでに10年余りとなる。
この三部の後に、集まってOBGと研修生がパーティー形式で行う「懇親会」で、各業界の先輩たちの話を聞く会が開かれてきた。また就活の時期がどんどん早くなる実態に合わせて、「秋の夕べ」の開催を春に前倒し「春の夕べ」としてきた。しかし、コロナ禍を挟んで、研究生と対面での接触が3年間途絶え、今回は「懇親会」なしでの再開となった。
 「パネル・ディスカッション」で登壇したのは、2017年卒でアマゾンジャパン勤務の織田遼星さんをモデレーターに、18年卒組が共同通信の伊藤綜一郎さん、NHKの榊汐里さん、文藝春秋の君島佳穂さん、そして20年卒、博報堂の木島祥子さんの5人。
 かつては必ずパネラーの一角に登壇していた新聞社勤務のOBGの姿が見えなくなっているのが、時代を象徴しているのだろうか。このパネル方式を始めた当初は、パネラーを選んで依頼をする段取りは、綱町三田会側で引き受けていたが、在学生と余り年齢差の大きくないOBGを選んで依頼することを研究生の側でできるようになった。自身がパネルを見聞きしたOBGが相手だけに、依頼もスムーズに運ぶようになったようで、大きな前進といえそうだ。
 パネルは、まずは各自の現在している仕事の内容と、働き方から。かつては研究所OBGの進路にみえなかったアマゾンといったEコマースの業界での仕事ぶりや、広告業界でも仕事の様子が大きく変わってきていることは、オールドメディア世代が聞いても面白いものだった。さらに、その業界・志望企業へ進もうと思った動機の開陳、研究生が志望するならお勧めの方法などなど、1時間余り。
 つづく「模擬面接」。これは面接官2,3人に対する研究生のやりとりを、まわりで他の研究生も見聞きする形式をとっていて、研究生が挑戦するのを尻込みしがち。かつては新聞メディアを中心に10人ほどの挑戦者があったが、まだ夏休みも終わっていないという事情もあってか、今回は新聞とテレビの記者志望が3年生の2人、テレビの制作部門志望が2年生の2人。あわせて4人だった。広告関係志望の1人が残念ながら直前にキャンセルに。予めエントリー・シート風に、志望の動機、最近思っている事など自由記述でペラ一枚程度を事前に提出してもらい、模擬面談となった。
 それぞれに志望の理由から、自分がどういう人物であるかを、まとめていて、記者志望の組みでは3年生だけに通信社やテレビ局のインターンを経験している研究生、歴史研究をもとに記者の時代の証人としての理想を、滔々と論を張る研究生も。またテレビの制作部門志望組の2年生は、共に「日常の生活」を大事に、家庭に「笑顔」を送る番組への意欲を語っていた。
 第三部、全体のまとめとしての「模擬面接講評」では、毎日新聞の記者出身で採用の担当にも当たった尾崎敦さんが、コロナ禍が去っても、採用の一次面接などがオンライン形式で行われる場面が増えていること。対面での緊張とはまた違うやりにくさもあるが、日頃は接点のないような年上の人と話をするなど、コミュニケーション能力を磨いておくことも有効。またインターンシップで即内定が下りるようなケースが増えている、進んで体験することもお勧め、との傾向も語られた。「講評」のあと、面接に当たったOBGを囲んで、参加した研究生たちが懇談する姿もあった。
     高原 安(元朝日新聞記者)

Authors

*

Top