ミニゼミリポート「安倍政権とコロナ対応」

 2020年9月16日、会議アプリZOOMを用いて2020年度2回目のミニゼミが開催された。今回は「安倍政権とコロナ対応」をテーマに川崎市健康安全研究所の所長を務める岡部信彦氏と、ジャーナリスト約10名、研究所所属の教授3名、学生5名が熱く議論を交わした。今回のミニゼミでは、初めに岡部信彦氏による新型コロナについての講演の後、学生やジャーナリスト、教授から岡部氏に対する質疑応答が行われた。また、メディア・コミュニケーション研究所の学生を対象にして行われた安倍政権の評価についてのアンケート調査の報告とフリーディスカッションも行われた。

 まず、安倍政権の評価についてのアンケート調査の内容を述べる。メディア・コミュニケーション研究所の学生を対象にして行われたこのアンケート調査は、安倍内閣に対する全般的な支持・不支持、安倍内閣の新型コロナ対策の支持・不支持、次期総理として誰を望むかといったような内容であった。

7年8か月続いた安倍内閣の全般的な評価は、支持していたと答えた人と支持していなかったと答えた人が50%ずつに分かれた。支持していたと回答した人の理由としては、株価上昇や就職活動がしやすかったことが挙げられていたほか、長期的な政権運営ができたことに価値があるという意見も見られた。それに対して、支持していなかったと回答した人の理由としては、公文書改ざんや新型コロナ対策での不手際が挙げられていた。

アンケートの要となっていたのは、新型コロナ対策への評価であった。全般的な評価のほか、10万円給付や全国民へのマスク二枚の配布などの具体的な政策に対する評価、PCR検査を受けるべきかどうか、デジタルアプリによる接触・感染確認に賛成かどうかについての質問項目もあった。安倍内閣の新型コロナ対策を評価するか否か、という質問については評価すると回答した人が30.8%、評価しないと回答した人が69.2%という結果になり、評価しないと回答した人の方が多かった。しかし、個別の政策に対する評価はそれぞれ違いが表れた。10万円の特別定額給付金の支給については69.2%の大学生から評価するという回答が得られており、多くの学生が支持していることが分かった。それに対して、全国民への布マスク二枚の配布については、92.3%の学生が評価しないと回答しており、ほとんど支持を得られていなかった。安倍内閣が行った学生支援緊急給付金などの学生支援の政策については、評価すると答えた人が42.3%、評価しないと答えた人が57.7%であり、評価が分かれた。これらの様々な政策を考慮した結果、安倍内閣のコロナ対策全般に対する大学生の評価は、およそ70%が評価しないというものになったといえるだろう。

次に、今回のミニゼミで行われた新型コロナ対策に関する様々な議論について述べる。小中学校の全国一斉休校は必要だったかどうかや、PCR検査の意義、オリンピックの開催などのテーマについて、議論が行われた。

小中学校の全国一斉休校要請は安倍首相が3月2日から実施したものであり、その必要性について議論がされた。この要請が行われた当時、岩手県や離島ではコロナの感染者が一人もいなかったため、全国一斉である必要はなかったのではないかという指摘があったが、岡部先生はこの問題について、「安倍首相は子どもをコロナから守らなくてはいけないと考えたのではないだろうか。しかし、全国一律で行ったのはやりすぎだった可能性もある。」と述べていた。

筆者にとって興味深かった議論はPCR検査の意義についての議論であった。岡部先生は「PCR検査はすでに破壊されたウイルスにも反応してしまうため、PCR検査で陽性の人が必ずしも感染力を持っているわけではない。PCR検査で陽性の人が全員感染力を持っているという勘違いが不要な隔離を発生させるのではないか。新型コロナの検査方法はPCR検査以外にもあるので、条件に合わせて検査方法を変えるべきだろう。」と述べていた。新型コロナの検査方法はPCR検査のほか、抗原検査や抗体検査がある。どの場合にどの検査方法を用いるべきなのか、これから検討の余地があるだろう。

私は今回のミニゼミを通して、新型コロナ対策について残された課題は山積みであることを実感した。安倍政権の今までのコロナ対策には評価できる政策も評価できない政策もあったと思う。新型コロナの流行は未曽有の事態であり、わからないことが多かったので、日本だけでなく様々な国で対策に不手際があった。しかし、現在は新型コロナの研究やワクチンの開発が進んでおり、新型コロナに関する多くの事実が判明している。ワクチンの使い方や、流行の第二波・第三波への対策、インフルエンザと新型コロナの同時流行への対策など、今のうちから想定できる問題点は山積みである。これらの問題点は私たちが今から議論し、検討する必要があると考える。

塩沢栄太(慶応義塾大学法学部法律学科2年)

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