“いざ出陣”となるか?-安倍政権 視界不良-

先月(3月)27日、衆参両院で森友問題をめぐる佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。安倍政権は首相本人を含め政治からの働きかけは無かったとする証言に胸をなでおろし、今回の証言をもって幕引きを図ろうとする。
安倍政権の視界の先には、当然今年9月の自民党総裁選での3選の実現が入っている。森友問題で急落した支持率回復が最大の課題だ。今の通常国会が終わる6月迄には目処をつけないと、いわゆる”安倍降ろし”が始まる。
支持率の回復には外交政策でのサプライズが最もよく効き、即効性もある。かつて、小泉純一郎首相が突如、北朝鮮を訪問(2002年9月17日)拉致被害者の一部を帰国させて、支持率回復に成功した。
当時、小泉政権の官房副長官だった安倍首相も同じ”夢”を追っている様だ。”夢追い”の最初のステップは今月(4月)18日に予定されるアメリカのトランプ大統領とのワシントンでの会談だ。
だが、先を越す様に朝鮮半島情勢は中国を巻き込んで急を告げている。日本は「リーダーとなる」という安倍首相の国会答弁どころか、寧ろ”蚊帳の外”が進んでいる様だ。
先月(3月)26日、電撃的な(金正恩朝鮮労働党委員長の声明)中朝首脳会談が中国・北京で行われた。この日、北京の人民大会堂では午後から夜にかけて習近平中国国家主席主催の会議と晩餐会があった。日本外務省はその夜そこに習、金両氏がいるという確認はついに取れなかったとする報道もある。
こうして今回、冷酷な国際政治の中に見えたのは中国と北朝鮮の”血の団結”。そして対決するアメリカというかつての朝鮮戦争を思わせる構図だ。こうした中、日米首脳会談でのトランプ大統領の出方は予断を許さない。実は「アメリカが北と話しをつける。日本は後始末として、北へ資金を提供して欲しい」とトランプ氏から”恫喝”されるのではないかと懸念する外交関係者もいる。
北朝鮮の核問題を巡っては、今月(4月)27日南北朝鮮首脳会談。そして実現するかどうか危ぶむ声もある米朝首脳会談が来月5月に控える。この状況の中で、安倍政権が点数を稼ぐ可能性は極めて低いという指摘が多い。
さて、多くの世論調査によると森友問題をめぐる佐川証言の結果、安倍首相らによる政治的関与の疑惑が晴れたと感じる国民は極めて少ない。実は、今回の証言で歯切れよく政治からの働きかけを否定する佐川氏の姿に、現役時代も国会で”歯切れよく”「(書類は)廃棄した」など虚偽答弁を繰り返した同じ佐川氏を見る人も多い。森友問題はこのまま終わるのか?
実は、森友問題を捜査している大阪地検特捜部も立件するかどうかの判断を通常国会が終わる6月においているという。焦点は、「財務省の公文書問題」と「森友学園への国有地払い下げ問題」だ。この内「払い下げ」については立件の可能性もあるとされる一方、「公文書」については立件できるか五分五分だという。この問題では佐川氏が徹底して証言を拒否しただけに、検察は敢えて佐川氏を起訴して法廷で真実を追求すべきだという法律家の意見もある。有罪が見込めなければ立件しないという検察のこれまでの慣習を超えて法廷で有罪・無罪を決着させるべきだという考えだ。政治家絡みの事件の多くについて捜査はするものの立件しないというこの所の検察への不信も背景にある様だ。何れにしても森友問題の闇がこのままでは安倍政権の支持率回復は厳しそうだ。
東京・永田町では森友問題の証人喚問が終わった日の翌日、3月(先月)28日、ある発言が波紋を描いた。自民党の第3派閥、額賀派(55人)の新しい会長となる竹下亘総務会長が講演で「(岸田文雄政調会長が立候補するなら支援する可能性は)十分にあると」と述べた。
9月の自民党総裁選は安倍首相一強のもと”無風”という”森友前”とは風向きが変わった瞬間だ。他の候補にも”いざ出陣”という兆しが出てきた。安倍政権がこのまま低支持率に苦しみ、場合によっては退陣に追い込まれるという思惑も覗く。確かに支持率の回復は厳しい。安倍政権の視界不良は晴れそうもない。
陸井 叡(叡Office)

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