「小池百合子」という政治家は初の女性首相を目指すか

 7月の東京都議選で惨敗するなど自民党の「1強政治」に陰りが出ている。民進党も求心力を失い、蓮舫代表や野田佳彦幹事長が辞意を表明した。こうした2大政党の揺らぎが、どう政界再編につながるのかはまだ分からない。
 しかし都議選で自ら立ち上げた地域政党「都民ファーストの会」を率いて大勝した小池百合子都知事の動きが、大きく注目されていることだけは確かである。
 かつて女性として初めて自民党総裁選に出馬した経験を持つ小池氏。今後、国政に進出して初の女性首相を目指すのだろうか。彼女の本音を探ってみた。
 8月7日、小池氏に近い無所属の若狭勝衆院議員が政治団体「日本ファーストの会」を発足させた。都民ファーストの会と連携し、国政新党を年内に結成したいという。次期衆院選(衆院解散による総選挙は別として衆院議員の任期満了は来年12月)の候補者を養成する政治塾を運営し、9月には初講義の講師を小池氏が務める。
 確か、小池氏は都議選で政治塾によって候補者を選出していた。同じ手法である。若狭氏の日本ファーストの会の設立を、小池氏の国政進出への第一歩と歓迎し、新党結成に参画しようとする動きも与野党議員の間で出ている。
 ただ肝心の小池氏は新聞各紙のインタビューに対し「基本的に都知事に専念している」と答え、国政への進出を否定する。
 新聞には小池氏の今後の動きを予測する記事も多い。
 面白かったのは、7月12日付毎日新聞夕刊の特集ワイドである。「小池さん『倒幕』するかもね」という見出しを付け、細川護煕(もりひろ)元首相に話を聞いている。
 その記事によれば、1993(平成5)年6月、前年に細川氏が立ち上げた日本新党がやはり都議選で大躍進した。そのときの選対本部長が小池氏だった。2人は恩師と教え子の間柄で、都議選告示の2週間前など度々、細川氏は小池氏から相談を受けてる。
 記事から細川氏の気になる談話を抜粋してみよう。
 「来たるべき総選挙で、少なくとも東京の小選挙区で、小池新党は戦うだろうし、全国展開もあり得る。本人はやらず、都政改革、オリンピックの成功へ向けて専念するでしょう」
 「政界、野党再編につながるかもしれない。小池さんは重要なプレーヤーとしての役割を果たすだろうし、期待もしています」
 7月26日付の朝日新聞朝刊オピニオン面の「耕論」は、細川氏のもとで首相政務秘書官を務めた駿河台大名誉教授の成田憲彦氏の談話を取りあげているが、これも興味深い。
 成田氏は「日本新党にはじまり、新進党、自由党、保守党と渡り歩き、新党の賞味期限が長くないことは、本人が一番わかっているはず。周囲がいくら騒いでも、よっぽどのメリットがない限り動かないでしょう」と小池氏の国政進出を否定しながらも、「政治家・小池百合子の最大の強みは、勘と度胸です。あれほどの勘と度胸を持った政治家はなかなかいない。もしも首相を狙うなら、自民党から迎え入れられる場合しかないでしょう」と分析している。
 実はこの私も東日本大震災の発生から3カ月たった2011(平成23)年6月15日、1時間半ほど小池氏に国のリーダーの在り方などについてインタビューしたことがある。ちなみにその記事は、産経新聞朝刊(同年7月5日付~7日付)に計3回に分けて掲載された。
 私が「小池さんは3年前(2008年9月)の自民党の総裁選で5候補中3位に入りました。初の女性首相に最も近い政治家だと思いますが」と水を向けると、小池氏は「客観的にかつ冷静にみて、女だ男だは関係ない。真摯に国民を守る人物ならいいと思います」と答えていた。いま思うと、「女男は関係ない」と言い切るところなど「初の女性首相」という言葉をかなり意識していたのかもしれない。
 この後、私は「いま、小池さんが首相だとしたら今回の原発事故にどう対処して収束させていきますか」と質問しているが、小池氏は臆せず「専門家に真っ先になすべきことを確かめ、次になすべき優先順位を確認する。これらを一瞬にして精査します」と返答していた。
 また「国のリーダーはどうあるべきなのか」との質問には「国民はこの人だったら自分の命や日本は安全だろうかを真剣に考えてリーダーを選んできたでしょうか。平時だけではなく、東日本大震災のような有事の際に活躍できる人物こそ国のリーダーです」と明確に答えている。
 小池氏は「自分が首相だったらどうするのか」を常に念頭において動く政治家のように思える。だから肝も据わっている。そう考えると、小池氏の本音は「初の女性首相」にある。どうだろうか。 
木村 良一(ジャーナリスト)

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