ミニゼミ報告「キュレーションサイト取材記」

 2017年7月5日、今年度第2回ミニゼミが、13名の学生と教授・助教授 それに6名のジャーナリストが参加して、慶應義塾大学三田キャンパスで開かれた。
 大きなテーマは、ネット社会とフェイクニュース。足掛かりとしてDeNA問題などで話題となったキュレーションサイトの現場について学生自身が取材をして、報告することから始まった。取材の対象は、アルバイトの学生ライター10名。レジャー系、恋愛系、キャリア系、ファッション系、旅行系、くらし系、医療系などジャンルの異なるキュレーションサイトごとの給与形態やノルマ、記事のチェックの有無などと聞いた。報告によれば、態様はサイトにより異なり、一括りにキュレーションサイトとしてまとめるのは難しいのが実感だったが、記事の正確さに留意している現場は少なく、営業的な要請から「どれだけ見られるか」のView数が重視されがちであることは共通して感じられた。つまり、閲覧数により収入を得ているため、それを重んじる風潮から記事の多さ、面白さ、SEO(検索エンジン最適化)を重視し、その質へのこだわることがないのだ。つまり、従来の取材を通じた情報の正確性、質を重んじるメディアとは異なる。
 取材報告の質疑ではまず、OB・OGからは初めて本格的に取材をした点を評価しながらも、取材対象が手近な学生アルバイトに限られ、もっと学生であることの利点を生かして簡単にアポイントをとれないような相手に、積極的に突撃していく精神が必要なのでは、との指摘があった。
さらに、キュレーションサイトの情報は、「旧来メディアである新聞でいえば、広告のページの記事に似ている。かつては営業サイドからの不正確な情報もあったが、それをチェックする仕組みができていた。ネットの場合、そのチェックがなく、その真偽を見極めるリテラシーが必要だ」と指摘があった。
 とはいっても、日常生活でちょっとしたことを調べる際、図書館で本を検索する学生はほとんどいない。「ググる」という言葉が浸透する今、ネットで検索をかけ、検索候補のトップに出てきた情報を信じてしまう現実がある。学生からは、誤った情報を発信する質の低いメディアを見極め、淘汰していくため読者にリテラシーを身につけ、育てるための啓発などは、新聞などマスメディアにも必要なのではないか、との問題提起もされた。
 話はさらに、フェイクニュースへ。アメリカの大統領選挙の際の、故意に流される誤った情報で、キュレーションサイトの間違い情報とはケタの違う話へと広がる。学生の疑問も、なぜ、フェイクニュースが作られ、それが信じられてしまうのか。
 ジャーナリスト側からは、大統領選挙のフェイクニュースを念頭に、メディアは、取材をして確度の高い情報を流しているが、既存メディアを信じないで、逆に「信じたい情報」を信じ、ネットの世界で「読みたい情報」だけを読み、信じる人たちには、メディアの情報が伝わりにくくなっている現状が語られた。
 旧来のメディアがその本分を発揮し、問題啓発を行い、読者はメディアリテラシーを身に付け、有効なメディアを選ぶ。このことが両立した時、問題の解決に向けた光が見えるかもしれない。
佐藤 瑞季(慶應義塾大学法学部3年)

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